決めポーズは見逃して

どうしてこんな事になってしまったのだろう。
風呂上がりの私は固まっている。
冷蔵庫の半開きの扉に手を掛けて、
こちらを見ている奥さんの遠いまなざしが痛い。
この冷たい空気は、
決して秋の夜のせいではなく、
ましてや冷蔵庫から漏れる冷気のせいでもない。
浮気現場を見つかるというのは、こんな気分だろうか?
むしろ火曜サスペンス劇場のテーマが流れてくれた方が、
幾分かましな気さえする。
独り暮らしが長くなると、
日常生活の中で人の目を気にしなくなり勝ちだ。
しかし同居が始まると、自然と互いの目が気になりだす。
例えばオナラなんていうのは誰もが通る関門だろう。
無くて七癖とはいうが、
自分でも気が付かない行動をとることもある。
今日は仕事でやっかいな事があり疲れていた。
帰宅は午前様になり、奥さんに電話もしそびれた。
脱衣所から出たらフローリングだ。
風呂上りで足の裏も適度に湿っている。
だから仕方無かったんだ。
そこでクイックターンのステップを踏んでも。
信じてくれ、私は悪くない。


私は決して台所でステップを踏まない記念
一度もターンしたこと無いんだってば。