いえいえいえいえ、
女が料理をするということも、案外大変だ。
我が家の伝統は、
「料理は手間、それを気づかせてはイケナイ。」
例えば、ブリ大根は造るだけなら簡単だ。
大根とブリを煮こめば、なんとなく形にはなる。
けれど、アラに手をかける度合いで、
確かに出来は全然違う。
「金沢は魚がおいしいから、
下手な味付けよりも、手間をかけた方がいいのよ。」
と祖母は言う。
そして、気兼ねなく食べてもらうのがいい。
レシピは値が張るものを必要とせず、
秘伝の何たらを使うでもない。
ありきたりの家庭料理に限る。
人に食べてもらうのが上達への近道だ。
サークルの男の子が風邪をひいたのでお見舞いに行った。
彼はいわば実験台。
下ごしらえしてきたお粥を、
高杉クンの部屋で温めた。
用意してきた一人用の土鍋は必要なかった。
なかなかキチンと使われている台所だ。
最低限の道具でうまく使っている感じが好印象。
残念ながらというか、当然というか、
味の感想は聞けなかった。
風邪をひいているんだから、そうだよね。
おまけに交際を申し込まれたようだけれど、
風邪が治るまで、答えは保留かしらね。
この話も対にしないといけない気がした記念
やっぱり手間かけないとね。