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内山 節 日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか 講談社現代新書 [ bk1 / amazon |
読んだ動機は、カワウソ絡み。
少なくとも金沢近辺ではキツネやタヌキと同列にカワウソも人を化かしていてた。
それはいわゆる妖怪の範疇には入っていない。
著者は1965年頃を境に「キツネにだまされる」話が発生しなくなったと始めている。
そして、それが現在では「未開な迷信」へと転じられ、だまされることを知性で理解できなくなってしまった過程を説明している。
本著は歴史哲学の視点から考察している。
そのため、残念ながら都市伝説(少なくとも江戸には存在していたろう)との関係や、家庭内での伝承過程については触れられていない。
その点については寡聞にしてまとまった研究が無いようなのでしようがない。
私が思っていたより急速にその変化(史観の転換)は起こっていたようだ。
一方で、母が「カブソに化かされる」話を聞いて育ったことにも納得がいった。
話は違うが、常々思っていた日本人の近代史観、
・東北地方太平洋沖地震後も相変わらずの「右上がり神話」
・明治以降の反省をしない日本人
・明治維新や日中戦争〜太平洋戦争で失われたものが省みられない
などの事柄が歴史哲学の側面から整然と説明されている。
これは正直スッキリした。
無批判な近代化(欧米化)によって、場当たり的な歴史観に乗った単純な知性偏重が日本の迷走そのものだ。
ダーウィニズム以降の歴史観の閉塞感についても興味があったが、これは本著の範疇ではないだろう。