相方を失った靴下は,どれほど悲しいだろう?
たいていの場合の靴下は,
左右いっしょにおろされ,
いっしょに履かれ,
いっしょに洗濯される.
たとえ右靴下に穴が空いたとしても,
右だけが捨てられるわけではなく,
左だけが残されるものでもなく,
両方揃って役目を終える.
ところが,何かのはずみで,
靴下の片一方が行方不明になってしまうことがある.
どこへ紛れたのか,見えなくなってしまう.
一足しかない靴下はかわいそう.
しばらくは取っておかれても,
もう履かれることはない.
やがて捨てられる時がくるが,相方はいない.
多くの場合,一度別れた靴下は,
再び出会うことはあまり,ない.
別れてしまった靴下たちは,
その役目を終えた後に,きっと,
靴下の片割れの国へ行くのだろう.
そこでは,先に役目を果たした靴下たちが待っている.
世界のそこここで別れたものたちが,
この国で再会を果たし,
そして靴下の天国へ行くのだろう.
だから,靴下の片割れの国.
この世は悲しみだけじゃない.