終わりは始めから決まっていた.
ストライキ権,のようなものがあるのだそうだ.
もとより,都俣さんは15cmほどの「魔法使い機械」である.
蓄えられる魔力はそれほど多くはない.
充分な蓄えがあっても,いつかは尽きてしまう.
つまるところ,都俣さんは主人から離れることができない.
そんな小さな都俣さんだが,主人とけんかもする.
科学的な人工知能は知識ベースから造られるが,
「魔法使い機械」は主人の感情の一部をもとに作られる.
そもそも,10階層の条件分岐があれば,
チューリングテストをパスするくらいの感情を作ることができるのだという.
ロボットの人権は,ついに認められることがなかったが,
そんなわけで,「魔法使い機械」には部分的ながら人権が存在する.
秘密保持事項やなんやらで,
都俣さんは,家出をした理由を何も話してくれない.
もの少ない私の部屋では,都俣さんは何もすることがない.
間が持たないのでビスケットを差し出したが,やはり食べないらしい.
日曜の昼間の間の抜けたTVを見ながらのんびり過ごした.
日が傾き,そろそろ晩ご飯の準備をしようかと思った頃,
玄関のベルが鳴った.
それが,都俣さんの主人だった.