都俣さんのあるじ

「はじめまして」
はじめて会った女性の歳を推測することは苦手だが,
彼女は私より二つ,三つ歳上だろうと思う.
身長は低く,平均的な私でも見下ろす感じになっている.
それでプラスマイナスゼロということにして,
タメ口で話そうかと一瞬考えた.
しかし,そうしなかった.
都俣さんの主人は緊張しているらしいからだ.
それは当然だろう.
見も知らぬ男(表札を見れば分かる)のところへ,突然訪ねていくのだから.
都俣さんの主人は○○さんといい,都俣さんではなかった.
なるほど,都俣さんを作っただけあってどこか似たところがある.
品がよい感じがするが,いい家柄というほどでもない.
けれども少し神経質で,人付き合いは苦手のようだ.
どちらかというと人といがみあうのが苦手なような○○さんだが,
どんな理由で都俣さんとケンカになったのだろう.
こんな人でもモノへあたるのだろうか.
○○さんに座布団を差しだしながら,そんなことを考えていた.
そして,やはり○○さんは一度断った.
結局はなしはまとまらず,
○○さんは,しばらく都俣さんを置いてほしいといった.