私に親友と呼べる人がいるなら,それは間違いなくユウだ.
ユウはチャベだ.とにかくよくしゃべる.
私はというと,ほとんど聞き役に徹している.
「話すのは気持ちいいが,聞くのは楽しい.」
と言ったのは誰だったか?
私にとっては,そんな感じだ.
ユウはお祖母ちゃんの形見にオロシガネをもらった.
オロシガネはその機能のシンプルさ故に普遍であるという.
そのため,その形は100年近く変わっていない.
件のオロシガネは銅製のほとんど装飾のないものだ.
やや肉厚で,長い感じもするが,
近所の雑貨屋に置いてあっても違和感はないだろう.
「おろす」行為は雄々しいものだという.
そして,オロシガネの手入れは慎重を期す.
冬のさかむけに噛みついたり,
不用意に扱うと,必ずとばっちりを食らう.
ユウにかかれば,ひとつのオロシガネにも,
7つの不思議と10の神秘が語られる.
もし,ユウが冒険者であるならば,
その伝記を書くのが私の役目だろう.
さて,明日はどこへ探検に行くのかしら.