何事にも不文律があり、
それを破ることは時には大きな痛手を被ることになる。
昼ご飯を食べようと思い、
キッチンへ行き冷蔵庫の上のフランスパンを手にした。
そうだ、オープンサンドにしよう。
こないだチハちゃんに教えてもらった煮豚がまだ残ってた。
まだ味付けをしてない煮豚を薄切りにして使おう。
フランスパンを包丁でスライスする。
一枚かじってみるが、まだ少ししっとりしている。
中サイズのトマトを輪切りにして、…
でもレタスがない。
替わりになるものはないかと探してみるがキュウリもない。
それよりも、味付けはどうしよう?
煮豚に合わせて醤油かける、これは違う。
ケチャップとソースで簡単デミグラス、ちょっとクドいかな?
と悩んでいたら、助け船がやってきた。
キッチンへ入るなり、惨状を目の当たりにしたチハちゃんは、
「こないだのアレ、まだ余ってる?」
何かと聞いたら、
「野沢菜のお漬物」
…
チハちゃんから聞かされた、素人が料理でやってはいけないこと、それは、
「和洋中は混ぜたらダメ」
私が具材を余らせたり、何か足りないと、
「いつも買い物する時に何を使って作るか考えなさい」と言われてしまう。
野沢菜を軽く水切りして、一本味見してみる。
「何とかなるでしょ」
とチハちゃんは言った、ちょっと呆れたような体ではあるが。
フランスパンに野沢菜を並べ、
その上に角煮、トマトを重ねる。
「チーズだとピザみたいだから、バターは無い?」
最後の一欠片だけ、乗っけた。
しようがないので、他のものにはスライスチーズを乗せた。
チハちゃん味付けは?
「そうねぇ…コショウだけでいいじゃない?」
そっか、野沢菜に塩味があるから、
あんまり味付けはくどくしないほうがいいかも。
最後にチハちゃんは自分のカバンから紙袋を取り出した。
タイムを開封して、すこーし振りかけた。
こんなこともあろうかと?
ではなくて、たまたま切れたので買って帰るところだったそうだ。
「このタイム、マサキにあげるよ」
鳥なんかは塩、コショウ、タイムだけでけっこう雰囲気が出る。そうだ。
オーブンで10分ほどサンドを焼く、ちょっと焦げ目が付くくらい。
挽いておいたコーヒーは止めて,飲み物は紅茶にした。
二人で食べてみたが、そんなに悪くない。
「何とか形にはなったんじゃない。」
チハちゃんから及第点をもらった。
でも食パンとかローストビーフだとかだとこうはいかなかったかな。
最後にやはりチハちゃんは言った。
「和洋折衷とか考えたらダメよ、買い物する時にちゃんと考えてね。」
実は私はこの味をけっこう気に入った。
これをもう少し工夫して私のレパートリーに加えようと思ったことは、
当分の間はチハちゃんには秘密だ。