感情の集約システムとしてのSNS

一田和樹
サイバークライム 悪意のファネル
ISBN 978-4-562-04890-8
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知識というものはシステマティックに積重ねることでその意味をもつ。
学校で習った歴史上の事柄で鎌倉時代の「御恩と奉公」がある。
長年、これがなぜ重要なのか分からなかったが、先日のNHK「さかのぼり日本史」でその答えを教えてくれた。
鎌倉時代に武士の主-従関係が初めて1対1になったのだそうだ。
それより前は武士が複数の主に仕えることがむしろ一般的だったという。
中学・高校の歴史はあまり真面目にやった記憶はないが、このことを教えてくれた先生は覚えがない。
もちろん教科書や資料集にも書かれていなかった。
逆に、持っている知識に未知の軸や文脈が加わることによって新たな発見や地平が見えることもある。
その意味でも「悪意のファネル」は面白い。
(広義の)IT関係の仕事に従事している人には、きっと受けると思うのだけど。
この小説はもちろんフィクションであり、普通の読み物としても楽しめる。
しかし、そのディティールは引っ掛かり所が多く、非常に興味深く、ついついそちらに気がいってしまう (w。
例えば、ちょうど2年前のこと、spamが激減した。
震災の某かの影響かと思っていたら、次の事実があった。
巨大ボットネットの「Rustock」がダウン――迷惑メールは激減か @IT
例えば、現在の自動車は走るコンピュータであり、ほぼ常にどこかしらと通信を行なっている。
条件付きながらも、走行中の車をハッキングし制御を奪うことが可能なことも検証されている。
このような記事・事実はすぐに記憶の中に埋没してしまいがちだけれども、それらがある形で結びついた時に思わぬ効果・現象を引き起こすことがある。
Steve JobsによるiPod、iPhone, iPad、iCloudなどの成果はこの典型的な例だろう。
彼自身による発明・発見は以外に少ない。
蛇足。
「Psycho-pass」に興味がある方は、このシリーズの残り2巻(未刊)も楽しめると思う。
Psycho-pass 公式
ここら辺りについては、別のお話になるので、日を改めて書くかも。