まったく,不思議なことに私は今コンピュータで食べている.
いわゆるSEというやつ.
昔から「おっとり型」だといわれ,自分でも「世の中のスピードについていけない」とずっと思っていたのに.
図書館を辞めて,私には行く先がなかった.
たまたま以前に仕事で作ったスクリプトに目をつけてくれた人がいて,意外な縁がつながって,私はプログラミングをすることになった.
さて,理系だったとはいえ,きちんとプログラミングをやったことはなかったし,ましてや仕事にするなんて考えたこともなかった.
そんな私がコンピュータだなんて…
途中には色々な出来事があったのだが,それはまた別な話.
そもそも,私が理系に進むとは,誰も考えていなかったらしい.
実際,私は文系の科目の方が成績がよかったし,クラスの中では本好きで通っていた.
けれども,「ぜったい純文学系」と友達に言われたときは,自分でも驚いたくらいだ.
「そもそも」なんて若い女の子の使う言葉ではないが,私はその頃から頭の中ではそんな言葉使いをしていた.
もっとも,今はもう若くはないけれど.
就職先が図書館になったのには色々といきさつがあり,偶然も重なった結果だったのだが,周りの印象は「収まるべきところに収まった」というものだった.
そして「早く適当な相手を見つけて結婚しなさい」という言葉が後に続いた.
私もあえて否定はせず,そんなもんか,程度に思っていた.
たしかに私は図書館にハマった.
見事なくらいに腰を据えてしまったのだ.
頼まれたわけでもなく図書館司書の資格を取得し,自費で図書館関係の学会に出向き,こともあろうに研究に手を出し,あまつさえ論文まで書く始末だった.
気がつけば,30を過ぎていたというわけだ.
そして悪いことに,私には焦りがまったく無かった.
三人姉妹の中で,私だけがヘンだった.
長女の気遣いや,末っ子の甘えを知らない私は本の中の空想に浸り,そのまま育ってしまった.
「アキちゃんはおっとりだから.」と既に一子の母の妹にしかられ,3人の男の子を持つ姉には呆れられている.
図書館を辞めたゴタゴタは,だから私の婚期を更に遠のかせた出来事として捉えられているので,家族には詳しく話してはいない.
まぁ,ともかく,私は新しい仕事をすることになった,