見つけられた手紙は瓶に入っていました.
もちろん,栓はコルクで大きめです.
瓶の口が小さめなので,なかなか手紙が出せませんでした.
出てきた紙は厚めで,少し青の混じったインクです.
言葉はこの国ものでしたが,日付は80年前のものだったのです.
彼が彼女に恋してしまったとしても,無理はありません.
その手紙が伝えたのは,古い骸ではありませんでした.
送り出されたその日のままの,気持ちだったから.
その小さな紙切れに,
書けるだけの文字で,
一人の名前,
一つの日付,
一つの地名,
そして,一行の文章.
それが全部でした.