いとしいうねうね

最近では、西尾維新さんの「物語シリーズ」を筆頭に怪奇譚が流行っていますね。
今風に言えば「都市伝説」、少し前なら「お伽話」や「迷信」かな?
ひっくるめてフォークロアっていうのがいいかも。
これらの流行は定期的にやってくるらしく、金沢でも「随筆譚」や「三州奇談」など江戸時代にもブームがあったようす。
何となく、昔の日本人の感覚に近いと感じたのが、次のモノでした。

北山猛邦
人外境ロマンス
ISBN 978-4-04-110472-9
[ honto / amazon / 国会図書館サーチ ]

何というか、神話や昔話(というかその原型)って往々にしてお話が論理的でない。
意表をつく展開なものも多く、私が編集者だったらこんな創作は絶対ボツにするだろう、的なものが多々あります。
それでも数百年、時として数千年も残るのだから、不思議なものです。
まぁ、形を変えつつ生き長らえるものも多いのでしょうけれど。
そんな感覚を感じる作品というのは意外と少なくて、北山さんのコレもそのひとつ。
あくまで私の感じ方ですし、北山さんの文章が壊れているとかそういうお話ではないので悪しからず。

酒と私 (嘘)

不本意ながら私は「酒飲み」だと思われることがままあった。
実際のところ酒は強い方ではないし、飲んでも日本酒で3〜4合くらいだ。
学生時代は周りの先輩・先生方が大方一升飲みだったので、そんな私が酒飲みと言われるのは恐縮至極。
とは言いながら、お酒が好きは好きでした。
さて、ここからが長い。
いわゆる「お酒好き」と言われる人たちにも色々なタイプがある。
まず「(酒を飲んで)騒ぐのが好き」な人たち。
安いお酒で楽しむならそれはそれでいいが、そういう場ではいいお酒はむしろ飲みたくない。
次に「(ご飯を)食べながら飲む」人たち。
こういう時はお酒の種類を選ぶのが難しい。
食べ物にお酒を合わせるか、お酒に食べ物を合わせるか?
意外な発見がある反面、がっかりも少なくない。
最後にやっと「食べないで飲む」人。
本当にお酒を味わうなら、これなんだろうな。
口休み程度のアテでチビチビ飲む、ひたすら飲む、半日くらい飲む。
そういえば、最近はじっくりお酒を飲んでいないなぁ。
とかそんな事を考えながら読んだのが次の本でした。

新久千映
ワカコ酒
ISBN 978-4-19-980145-7
[ honto / amazon / 国会図書館サーチ ]

意外なところでコンニチワ

青柳碧人, 浜村渚の計算ノート 3さつめ 水色コンパスと恋する幾何学 を読み終わり、あとがきを見ていると 北山猛邦 さんのお名前。
まぁ、意外というほど青柳さん、北山さんのことは知らないのですが、
読んで面白かったのでご紹介。

北山猛邦
人魚姫 探偵グリムの手稿
ISBN 978-4-19-863572-5
[ honto / amazon / 国会図書館サーチ ]

この本もタイトルがストレートなので、読もうかどうか結構迷いました。
結局は三ヶ月ほどしてから買って、読み終えました。
ファンタジーというよりはミステリー?
テリー・ギリアムが映画にすると “ブラザーズ・グリム” になるし、
日本人が小説にするとこの本に成るのかな。
昔読んだ童話学の本で、東洋の類型的なお伽話「鶴女房」が上げられていました。
いわゆる鶴の恩返しですね。
東洋のお話では、鶴女房のように最後に余韻を残して終わるものが多いのに対して、
西洋では、そこから話が始まり、(去っていった女房を再び)手に入れるまでがストーリーになる、ということだった。
ここでいう西洋は、正確には近代以降なのでしょう。
「本当は怖い…童話」という書籍も多く出ていますが、グリムやアンデルセンが採取した時点で既に子供向けに色付けしているようす。
日本に入ってくる欧米の情報は合理主義バリバリのものばかりですが、西洋にも当然泥臭いものがあったし、今もあるはず。
ケルトのお話なんかもそうですよね。
そういう意味で見てみると、事件のミステリーという意味はもちろんのこと、
「童話」に関するミステリーでもあるのかなと思った。

kindle

The Freedom Manifesto:

先日、友人から勧められた本です。
日本語訳はないようですが、翻訳が出るにしても時間が掛かる気がするので、原文で買ってみました。
一年前から電子書籍を試してますが、横書きの本は初めてなので試してみます。
まぁ、急いで読む本でもないので、英語で電子書籍でゆっくりでもいいかなと。
kindleはハードウェア持ってないですが、iPhoneアプリで遊んでます。
そういえば、英語で読み通したのって Anne of Green Gables くらいだった。

数学の魅力?

私は大学では数学を専攻しましたが、
いやだからこそ、数学について話をするのが難しい。
よく「数学の美しさ」という言い方をされますが、そんなものありません。
黄金比の話題などありますね。
あれは数学の中に美的なものを見ているのでしょうが、
「美しさ」というものは数学の外の主観に他なりません。
「数学って何が面白いの?」って聞かれて困るんですよ。
数学って数学だから面白い。
数学をやってみないとその面白さを体感できないと思うし、比喩するべきものがない。
私が読んで一番おもしろかったのは、
竹内外史先生 (石川県出身)の「記号論理学入門」。
数学関連で「共感」したのってこれが一番大きいなぁ。
というのが長い前置きです。

青柳碧人
浜村渚の計算ノート
ISBN 978-4-06-276981-5
[ honto / amazon / 国会図書館サーチ ]

前々から書店の平積みで気になっていました。
計算ノートって何だろう?
先日、初めて手にとって深く考えずに買いました。
楽しく読めました。
物語としても面白い切り口で、しかし「数学テロ」って。
しかし、これが数学かというと…これは蛇足ですね。

Boy meets girl.

歳のせいか、物語を読む時に色々と勘ぐってしまいがちです。
素直に読めると改めて思わぬ感動に出会えたり、と楽しいことも。

施川ユウキ
オンノジ
ISBN 978-4-253-14294-6
[ honto / amazon / 国会図書館サーチ ]

なんか、ラブ ストーリーでした (照
最初に読んだ時は普通だった。
二回目を読み始めて、はたと気がついた。
めちゃくちゃ甘くてベタベタ、イチャラブなお話でした。
わたし的には今年一番の恋物語です。
あとがきの最後の一節に答えがあった。
そういえば「陽だまりの彼女」が映画化されるんだって。
映画『陽だまりの彼女』 @公式

名言を引用したいお年頃

小さい頃にトイレに日めくりカレンダーがあって、そこに名言・格言が書かれていた。
けっこう覚えているもので、例えば、
“人生は何事をも為さぬには余りにも長いが、何事かを為すには余りにも短い…”
ー 中島敦 「山月記」
なんて思って、久しぶりに「山月記」を読み返して見たら続きがあった。
“…などと口先ばかりの警句を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭う怠惰とが己の凡てだったのだ。”
結果的に言葉遊びになっていることへの、まさしく警句になっていた (笑。
電子書籍の無料サンプルで読んだ雑誌にでていたものが単行本になったので読んでみた。
まぁ硬いことは抜きにして。

施川ユウキ
バーナード嬢曰く。
ISBN 978-4-7580-6371-5
[ honto / amazon / 国会図書館サーチ ]

まぁ、名言を引用したいお年頃ってあるよね。
普通それは40代以降になるのかしら?
いつの間にか「今の若い者は」なんて平気で言うようになってるし。
私はSFは好きだけど、”SFファン” とは言い出せない。
そんな気持ちが代弁されていて楽しかった (笑。
細かいことだが、著者の名前をずっと「せがわ」と読んでいたけど、「しかわ」でした。
格言・名言といえば、次も面白かった。

Tove Jansson
ムーミン谷の名言集, パンケーキにすわりこんでもいいの?
ISBN 4-06-209211-5
[ honto / amazon / 国会図書館サーチ ]

良い料理(の本)

拓さんの画とお話が好きで「めくりめくる」とか読んでます。
絵は口ほどにものをいい。
閑話休題、
同人誌で「リア充ごはん」を出されているのは知ってたのですが、手を出そうかどうしようか迷ってるうちに忘れる、といういつもの状況にありました。
がしかし、一般の書籍として刊行されると知り買ってみました。

COSMIC FORGE, 拓
リア充ごはん
ISBN 978-4-8470-9145-2
[ honto / amazon / 国会図書館サーチ ]

失礼ながら、料理の入門書として意外に良かったです!
コラムがなかなか素敵です。
「…まず最後までレシピ通りに作ってみましょう。
…アレンジするなら必ず2回目以降から、まずはベースの味を知ってから、自分の好みに調味料や具材を足していきましょう。…」
私は寡聞にして知らないだけなのでしょうが、こういうことをきちんと書いてある料理の本をあまり見ないです。
でも、こういうことこそ初心者・入門時に必要なことではないかと。
「いざ必要な時にみりんがなかったら、砂糖と酒で代用が可能です。
…このメニューにしかみりんを使う予定がないなら、買わなくてもいいかも?」
こういう知恵・経験って日常の料理では大切ですよね。
いざとなれば代用できる・アレンジできるという頭の柔軟さも必要。
「おいしくなるお米の研ぎ方・炊き方
…ひと手間省いて無洗米?」
普通のお米の研ぎ方を紹介してますが、無洗米も選択肢として取り上げています。
最近は “お米を研ぐ” ではなく “お米を洗う” という方が普通なのかな?
「こくまろ牛すじカレー
…隠し味:インスタント コーヒー…」
その他カレーの隠し味が紹介されています。
しかし、隠し味の定番といえば “しょうゆ” だと思っていたのですが、もう古いのかな?
「揃えておきたいキッチンウェアをチェック!」
計量スプーン・はかりは25年間使ったこと無い…
包丁は魚用のスチール製もある。

割と普通の料理

西川魯介さんといえば、ちょっとアレなマンガを描く方ですが、
(かなり控えめな言い方ですが私は好きですよ)
久しぶりに見たら、割と普通の料理漫画も描いていたのですね。

西川魯介
まかない君
ISBN 978-4-592-14106-8
[ honto / amazon / 国会図書館サーチ ]

フタを空けてみれば、やはり西川節。
それはさておき。
男の料理ですね〜。
でも、日常な視点でいいです。
よく料理本に出ている「卵の黄身だけ」使う料理で白身はどうするのよ、ってありますよね。
このマンガでは黄身を使うと、ちゃんと白身も別の料理で使ってます。
そんなところが普通な感じでいいよね。

ついてたオビとペーパーです。
このインスタント ラーメンの焼きそばはやったことある。
冷麺にしたこともあります。
私は薄味なので粉末スープを1/2にします。

感情の集約システムとしてのSNS

一田和樹
サイバークライム 悪意のファネル
ISBN 978-4-562-04890-8
[ honto / amazon / 国会図書館サーチ ]

知識というものはシステマティックに積重ねることでその意味をもつ。
学校で習った歴史上の事柄で鎌倉時代の「御恩と奉公」がある。
長年、これがなぜ重要なのか分からなかったが、先日のNHK「さかのぼり日本史」でその答えを教えてくれた。
鎌倉時代に武士の主-従関係が初めて1対1になったのだそうだ。
それより前は武士が複数の主に仕えることがむしろ一般的だったという。
中学・高校の歴史はあまり真面目にやった記憶はないが、このことを教えてくれた先生は覚えがない。
もちろん教科書や資料集にも書かれていなかった。
逆に、持っている知識に未知の軸や文脈が加わることによって新たな発見や地平が見えることもある。
その意味でも「悪意のファネル」は面白い。
(広義の)IT関係の仕事に従事している人には、きっと受けると思うのだけど。
この小説はもちろんフィクションであり、普通の読み物としても楽しめる。
しかし、そのディティールは引っ掛かり所が多く、非常に興味深く、ついついそちらに気がいってしまう (w。
例えば、ちょうど2年前のこと、spamが激減した。
震災の某かの影響かと思っていたら、次の事実があった。
巨大ボットネットの「Rustock」がダウン――迷惑メールは激減か @IT
例えば、現在の自動車は走るコンピュータであり、ほぼ常にどこかしらと通信を行なっている。
条件付きながらも、走行中の車をハッキングし制御を奪うことが可能なことも検証されている。
このような記事・事実はすぐに記憶の中に埋没してしまいがちだけれども、それらがある形で結びついた時に思わぬ効果・現象を引き起こすことがある。
Steve JobsによるiPod、iPhone, iPad、iCloudなどの成果はこの典型的な例だろう。
彼自身による発明・発見は以外に少ない。
蛇足。
「Psycho-pass」に興味がある方は、このシリーズの残り2巻(未刊)も楽しめると思う。
Psycho-pass 公式
ここら辺りについては、別のお話になるので、日を改めて書くかも。