「架空叢書」案内

「黎明」
一説には「北極点よりも北が存在しない」ように,「時の始まり以前」というものは無いのだそうです.
つまり,時には始まりがあったということなのでしょう.
「はじめに言葉ありき」,「全ては流れから生ずる」,「音楽による世界の創造」...
始まりの物語,って想像がふくらみます.
ということで,物語に始まりが必要なように,物語集にも「始まりの物語」が必要だったのです.
新しい時代の初まり.
それは秘められた可能性の蕾みがいままさに開かんとする瞬間でした.
全ての曙,暁,彼誰はどのようにして始まったのか,その起源に関する物語です.
1988.11.15-『四十と八の物語』より

断片

私は小さい頃,訳もなく泣いた.
そのとき,いつも,
「帰ろう,帰ろう」
と言って両親を困らせた.
その家は,私が生まれ育った家そのものだったのに.
「故郷」を,私が探し始めたのは,物心がついてすぐだった.

光の速度を超えて

「第一種星間速度というのは,いわゆる相対論的制限速度です.
すなわち,空間を連続的に移動する場合の速度の上限であり,これが光の速度です.」
「第二種星間速度は,空間を離散的に移動する場合の上限速度. 空間跳躍により移動する時には,移動先の情報が必要になります.
しかし相対座標系を用いる限り,ハイゼンベルグ則のため移動距離が長くなるに従って情報収集に必要な時間が増加します.
それゆえ,空間跳躍においても速度の限界が生じるのです.」
「第三種星間速度は,絶対座標系を用いて空間を離散的に移動する場合の上限速度です.
絶対座標系による空間認識の場合,空間跳躍における絶対距離的な制限は跳躍エネルギーのみに依存します.
この場合,空間認識に要する時間と物理的な跳躍エネルギーにより速度の上限が定まります.
ただし,絶対座標系による空間認識を行うには,第一種情報臨界を超えた計算処理能力が必要となります.
→参考:第一種情報臨界速度」
「第一種情報臨界速度:記号処理系における計算では,ディジットのスイッチングによって物理的な計算速度の限界が定まります.
これは,離散計算機においても,量子計算機(出力時の確率的翻訳過程を含める)においてもあてはまります.」
「第二種情報臨界速度:微小空間跳躍結合による記号処理系では,第一種情報臨界速度を超えることが理論的に可能となります.
しかし,この場合も二つの制約が存在します.
一つは高速化にための集積による情報質量の高密度化による空間崩壊.
すなわち,情報媒体の高密度化によりシュバルツシルト半径を超えてしまうことです.
もう一つは,多重繰込みによる計算過程の複雑化のためゲーデル則による追定義の量が爆発的に増加することです.」
「第三種情報臨界速度:遠隔相互作用を用いた構造体では,空間崩壊を避けることができます.
また,離散構造処理系(飛躍推算法)によりゲーデル則による処理速度の減衰を緩和することが可能となります.
ここでの速度限界は構造体を構成する物質量の限界によって定まります.」
(ここまで読まれた方ゴメンナサイ.全部ウソです.)

「竜が飛ばない日曜日」咲田哲宏

DOWさんの挿絵に誘われて買ってあったのですが,最近やっと読了.
やはり,今の時代に「竜」が生きていくことは難しいですね.
「最初の星間航行種族」第1種情報臨界すれすれの高度な制御を必要とする長距離跳躍を宇宙船という形にできなかった先人たちは,その機能を一つの生命体に結実させた.
こうして生まれた「竜族」は生きた宇宙船として世界を飛び巡った.
それは “気難しい” 船だった...

星間航行種族の末裔

破輪寺院.
玉眞尼によって開かれたと伝えられる.
破輪(Parinn)とは,輪(廻)を破るの意であり,後の時代の当て字.
それは,受け継がれた玉眞尼の名(奥居の宮輿代)を,永遠に歳をとらないと例えたことに由来する.
「破輪寺院開祖玉眞尼祭祀祝詞」には,多くの秘密が隠されている.
微浪流成復帰には,ミーロゥ リャナシーの名が隠されている.
ミーロゥはゲール語のモルーア(アザラシ)の英語読みより,リャナシーは同じくゲール語のリャナン シー(妖精の恋人)より.
「リャナン シー」はケルトにおいて詩/死の女神である.
これはその謎の一つである.
「ケイゾク/PHANTOM」DVD,まだ見てない.
「フリクリ 1」DVD,元気があってよろしい,です.

竜耳

幼名カデル.
亜大(陸)に降り立ち,破輪(パリン)に寺院を建立した.
「玉眞尼(pure jade)」と名乗った.
また,「小夜哭」とも呼ばれ,その名は代々「奥居の宮輿」に受け継がれた.
「破輪寺院開祖玉眞尼祭祀祝詞」は彼女の残した言葉と伝えられる.
「マメシバ」エンドレス.

「断片1998年夏頃」

朝の光
失われていたお伽話が目を覚ましました.
主人を失った庭に,居なくなったはずの主人が,そこにいたのです.
そしてプフリを待っていたことを告げたのです.
いつか,勇敢な騎士が現れ,竜の呪いを解いてくれると.
自分でも不思議でしたが,誰もいない庭でシシルを見つけたことに比べれば,
はるか昔に消えてしまったはずの竜の物語も,至極当然のことのように思われたのです.
星のない夜
シシルは話し続けました.
それは,まるでこの数百年の孤独を埋めあわせるかのようでした.
そして,言葉を止め,うつむくことで,シシルはその願いをプフリに伝えました.
城の外はすっかり暗くなっています.
雲一つないその空には,しかし,一つの星も見えなかったのです.
二人と一匹が通ると城の中が松明で明るく照らし出されます.
しかし,彼らが通りすぎると,すぐに暗闇が追いかけてきます.
その黒い魔物に追いかけられるように,プフリとシシルは走りつづけました.
そして,二人は,最後の扉を開けました.
昇らない陽
次の瞬間,巨大の大声が城中に響き渡りました.
そして,竜の体は吹きあがった炎に包まれました.
ひとしきり燃え上がった火は,突然何かに吸い込まれたように消えてしまいました.
そして,竜の巨躯も,炎と共に消えていました.
「尻尾を盗まれた竜」は,その尻尾を取り戻しました.
しかし,その光る目と不適な笑いを浮かべた表情は,つい先に滅びたはずの竜そのものだったのです.
「一度だけ,恋のまねごとをしたかった.」
止まった時間はゆっくりと再び動き始めました.
そして,溶け始めた時間の中から,凍っていた人々が一人,また一人と現れました.
まもなく,谷の命ある者皆と,そうでない物全てが時間を取り戻したのでした.
多くの時間が再び息をふきかえしました.その中で,たった一つの時間だけが死んでいったのです.
陽の下で
華やかなお祭りの中で,その主役たるプフリだけが暗く沈んでいました.
そして,その隣には栗色の髪をした姫様が座っているのでした.
そのことがプフリにはとても耐えがたいことでした.
宴は,にぎやかに続けられていました.
城の裏口からは,一人の少年がひっそりと出て行きました.

「おはなし」

語り部は,魔法使いの末裔であるキャリオ.(女19才).
東の果てに育ち「あかときの杖」を受け継いだ彼女は,西の果てに眠るという「かわたれの杖」を求めて旅に出る.
北西の廃都で隠れ育ったルシルオン(男16才)は,かつて滅びた王族の忘れ形見.
一人残された彼は目的も無く旅を続ける.
それと知らず王権の証である銘剣「水の舞」を携えて
旧世界に生きる最後の竜騎兵,シシイン(男17才),イオルマイン(男17才),パシフィ(女17才).
時代の風は彼らを新世界へと追いやってしまう.
氷河期に入りつつある世界では,かつて隆盛を極めた「魔法」は残滓に過ぎず,また,そえに支えられた王権ももはや存在していなかった.
「科学」はいまだ成熟しておらず,その世界には滅びの道のみが示されているように見えた.
というのが,昔考えた(今も続いてますが),とある物語の一部です.
この物語では,多くの出会いが生まれますが,その全てがすれ違いに終わります.
そして,この物語自体が2つの時代のつなぎ目となると同時に,それらの時代のすれ違いになってしまいました.
「人々のために,世界を滅ぼそうとする者」しかし,彼は失敗してしまいます.
「人々を崩壊する世界から救おうとする者」彼らの必死の努力にも関わらず,それは果たせません.
「ただ愛する人を守ろうとする者」彼,彼女は大きな混乱に巻き込まれ,一人を守ることすら適いません
「全くの個人的な理由から結果的に世界を救った者」唯一欲したものを手に要れられないことを知った彼には,世界などどうなってもよかったのです.
改めて書いてみると,私はサドかしら,と思いました.
この物語の最後に「世界」は滅びを迎えます.
完全に消え去ってしまうわけではありませんが,それは,また別のお話です.
□ 読んだ本: 「天使は結果オーライ」野尻抱介.
「ロケットガール」を読んでから随分経ってしまいました.
やっぱり,勢いですね.
ということで今は「私と月までつきあって」を読んでます.
ちなみに「オルフェウスには命をかける価値がある!」に熱くなってしまったことは秘密です.
□ TVで見た: 「12モンキーズ」T.ギリアム監督,この監督も丸くなったなぁ,なんて昔のことは知らないくせに思いました.
いえ,「ブラジル」や「バロン」に比べてね.
でも,ブラピはまぬけ過ぎ.