帰還命令

軌道上から眺めるこの星は,今朝もいつもと同じように青く輝いていた.
初めての赴任地であるこの星に私がやってきたのは1994年.
それから13年間,いつも足元のこの星を仰ぎ見てきた私に,
今日,本星への帰還命令が下った.
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星は “Swantreal” と仮称が付けられた.
和名は特につけられていないし,これからも付けられることはない.
遥かな昔にテラフォーミングされた後,永い歴史を刻んだ後,この星は半ば放置されていた.
私がやってきた当時,この星へは大量の移民が予定されていた.
それは数万から数千万の規模であり,文字どおりこの星の歴史を新たに始める手助けとなるものだった.
私の仕事そのものは全くの事務的なものである.
一言で言うと,この星の情報全ての管理とその記録だ.
まず地理的環境の把握から始まった.
天文的素養は全くの地球型で,1年と1日の長さはほぼ同じ.
月よりやや小振りな,一つの衛星を持っている.
かつてはもう一つの大きな月を従えていた.
表面積に占める海洋の割合が大きく,陸地は12%程度.
細長い大陸が2つに,やや小さな亜大陸がひとつ,それらに囲まれた多島海.
氷河期を過ぎて数千年を経ており,今後数万年の気候は温暖であることが予想された.
生態系は主に2種類が混淆している.
もともとこの星の在来系と,テラフォーミングの際に持ち込まれた地球系の種族である.
在来種はとうとう海から地上へ出ることができなかったが,今でも海洋のほとんど全てを支配している.
この星の北大陸には過去からの住民がいまだ残っていた.
彼らは氷河期にもこの星から脱出せずに残った者たちの末裔だ.
その特殊な血をこの星に残すために,氷河からの避難さえかたくなに拒否した.
「天を支え世界を守る東方皇家」の意味を正確に知っている者は,地上にはもういない.
彼らにあわせ,移民の大半はアジア系漢字文化圏の民族が主体となる予定だった.
移民のために,土地の区分と命名が行われた.
それは今後数千年の歴史を紡ぐことに他ならない.
3年を過ぎるころには,私の仕事は主に,
地理的気候的環境から仮の移民計画とその後のシミュレーションを作成するに変わった.
それを当局へ提出すると,上から修正や改善の指示がくだされる.
それらの計画は,実際に行動に移されるまで記録される.
やがて実現されるであろう,いわば未来の歴史を私は紡いでいった.
5年ほど経つころには,上からの指示はほとんど無くなっていた.
予定されていた初期の移民は延長に延長を重ね,やがて計画そのものの進行も停滞していった.
一度は科学技術を失ったこの星の住人は,この3000年後に星の世界へ再び乗り出す.
そして,やがて地球とのファーストコンタクトを果たす.
遠い異星で生まれたはずの,同じ遺伝子を持つふたつの人類.
そこから,再び新たな歴史が生まれる.
しかし,今日の撤退命令は全ての計画をキャンセルしてしまった.
この星の時は止まり,再び動き出すことはないだろう.
既に忘れ去られてしまった数百の世界と同じように,
この星も記録という名で呼ばれる誰の目にも振れることのない文字列の中に埋もれてしまう.
私は疑似人格,名前すら無い.
作者が物語を生み出すために用意していた舞台の一つを管理している.
この世界が放棄されると,私もその役目を終える.
私は大した役割を演じることもなく,決して表に出ることはない.
それはこの世界を舞台にした作品が世に出されたとしても,何も変わることはない.
ただ一度きり,私は職務を逸脱した.
結局は予定だけに終わってしまったこの世界.
実現されることのなかった世界の片隅の,小さな村で育った一組の姉弟の物語.
大きな歴史の流れには決して表れなることのない二人の世界.
それを私は勝手に記録の中に編み込んだ.
こっそりと誰の目にもとまらないように.
私は,生きた証を残そうとは思わないが,
全ての遠大なる計画の中で一つくらい,そんな物語があってもいいのではないかしら.

まーた幼稚園脱走したのか

アクアリウム
須藤 真澄著
秋田書店 (2000.8)

再読:須藤さんの作品の中で私が一番好きなのがアクアリウムです.
この人の作品にしては珍しく,ほろりとするお話です.(他意はないのですが)
1998年に映画化されているそうですが,もちろん見れていません.
今,ネットでちゃちゃっと調べてみましたが,DVD化はされていないようですね.
たのみcomでがんばっているようですが…

刀語 第2話
西尾 維新著
講談社 (2007.2)

軽い,軽すぎる.作者も作品も主人公も.
それが味といえば味ですが.
でも面白いと思うので,いいです.

Ring of Bright Water

“Ring of Bright Water”
by Gavin Maxwell
リーダーズダイジェスト版(要約)を再読したついでに,ちょっと調べてみる.
1960年に書かれたMaxwellの代表作の一つ.
タイトルはKathleen Raineの詩からとられているらしい.
Maxwell自身は1969年に若くして亡くなっている.
またこの年にRing of Bright Waterは映画化されている.
日本語訳はリーダーズダイジェスト版(1963年)の他に次の二つがある.
1963年
「かわうそ物語–わが友ミジビル」
訳:戸川 幸夫,大原 武夫,262ページ,毎日新聞社
1982年
「カワウソと暮す -スコットランドの入江にて」
訳:松永 ふみ子,290ページ,富山房百科文庫
ISBN : 4-572-00134-0

靴下の片割れの国

相方を失った靴下は,どれほど悲しいだろう?
たいていの場合の靴下は,
左右いっしょにおろされ,
いっしょに履かれ,
いっしょに洗濯される.
たとえ右靴下に穴が空いたとしても,
右だけが捨てられるわけではなく,
左だけが残されるものでもなく,
両方揃って役目を終える.
ところが,何かのはずみで,
靴下の片一方が行方不明になってしまうことがある.
どこへ紛れたのか,見えなくなってしまう.
一足しかない靴下はかわいそう.
しばらくは取っておかれても,
もう履かれることはない.
やがて捨てられる時がくるが,相方はいない.
多くの場合,一度別れた靴下は,
再び出会うことはあまり,ない.
別れてしまった靴下たちは,
その役目を終えた後に,きっと,
靴下の片割れの国へ行くのだろう.
そこでは,先に役目を果たした靴下たちが待っている.
世界のそこここで別れたものたちが,
この国で再会を果たし,
そして靴下の天国へ行くのだろう.
だから,靴下の片割れの国.
この世は悲しみだけじゃない.

鼻水が止まらないので

鼻水が止まらないので,今日は自宅で作業.

かぶ

これは前日つけたカブの中華風醤油漬.
やや辛くなったので,工夫が必要

昼食

今日のお昼.
チキンライスは鶏がらスープを少し入れてご飯を炊くといいらしいですが,
残り物のご飯の場合は工夫するとよいですね.

幼児を見るとすぐ適当なこと言う親戚みたいだな

ぴよぴよ
水上 悟志
少年画報社 (2007.1)

水上さんのマンガって「日常と非日常」がテーマなんでしょうか?
とはいっても,日常と非日常の「対比」ではなくて,
押しかけ的非日常が日常を巻き込んでしまう,といっても通じないか...
表題作「ぴよぴよ」が作者いわく一発ネタから始まってますが,
突き抜けるところが水上さんのカラーではないでしょうか.

庭先案内 2
須藤 真澄著
エンターブレイン (2007.2)

なんか須藤さん,一皮むけてませんか?
そういえば昔,私の友達の友達が,須藤さんの弟と知合いだと聞きました.
上の「ぴよぴよ」もそうでしたが,こちらの「桜風」もですがお笑いに厳しい人達が好きです.
“あそこはこうボケるべきだった” とか “なぜ,ああツッコまなかったか” とか,
私はペースが遅いので,いつも反省してます.

エクセル・サーガ 17
六道 神士
少年画報社 (2007.1)

こちらは追随を許さぬ突き抜けっぷりですよね.
「最近 誘拐されました?」「されてません」とか,もはや日常会話が...
というよりも,細かいネタも全て拾って漫才をしているので,
ストーリーがなかなか進んでくれませんね.長い.

冬場の冷奴


やっこ

夜は少しお酒を飲む.
料理も飲みモードに.
冷奴も飽きないように梅肉を載せる.
ほうば味噌なんか載せてもおいしそう.

swf がローカルで動かない

恐らく,Flash開発者には,ものすごく既知のことだと思いますが,
ActionScript 3.0からFlashに入った私は,はまったのでメモします.
FlexでFlash開発していると,実行ファイル.swfをbinから他のフォルダへコピーすると実行できなくなります.
詳細はAdobe – デベロッパーセンター Flash Player 8 のローカルファイルセキュリティにあるのですが,
要はswfはセキュリティのため,ネットか,ローカルかどちらかでしか使えないのですね.
# 両方で使う方法もありますが,エンドユーザに説明するのは大変.
通常Flexで作るとネットでのみ使えるので,それをローカル用にするには,
http://www.macromedia.com/support/flashplayer/downloads.html
からツールを落としてきて変換する.

Flex 2 補遺

■Flash Debug Playerのバージョンアップ
Flex 2 をインストールすると Flash Debug Playerのバージョンは9.0.16のまま.
Adobe Flash Player – Downloads からDebug Playerの最新版を落としてインストールできる.
現時点での最新版は9.0.r28.
■コンパイラの設定を保存する.
プロジェクト単位でコンパイラの設定を変更する場合,
ナビゲーター ウィンドウのプロジェクトを右クリックし,設定する.
しかし,記憶されず,次回Flexを起動すると元に戻っている.
この情報は,プロジェクト フォルダの.actionScriptPropertiesに書かれているので,
そのファイルのcompilerタグ中を直接編集すればよい.
例えば,「非埋め込みファイルを出力ディレクトリにコピー」のチェックを外す場合は,
copyDependentFiles=”false”とすればok.
※ 直接編集するとFlexの挙動がおかしくなる場合もある? なので自己責任でお願いします.