文芸的側面:アイヌ編

カワウソはアイヌ語ではエサマン(esaman)。
○カワウソは働き者で立派な外套を着て裕福に暮らしていた。
 他方、キツネはなまけ者でボロ外套を着て、いつも他のものを盗んだりして嫌われていた。
この比較はカワウソやキツネの外見をよく表していて面白い。
カワウソは水に入り捕食するため、毛皮が痛むことは死にもつながる。
一方、映像でみるかぎりキタキツネは、季節によってかなりボサボサな感じだ。
実際に明治以降のカワウソ毛皮の輸出は幾許かの富をもたらしたのだろうが、
それがカワウソに還元されることはなかった。
「毛皮は、その持ち主が着ているのが一番美しい」
と言われるようになるのは、合成繊維など代用品が普及してからだろう。
○カワウソは頭がつぶれていて物忘れが激しい。
 よく物忘れをする者を「あいつはカワウソだ」といい、
 要領を得ない伝言や復命を「カワウソの使い走り」などという。 
これも頭骨が扁平なカワウソの特徴そのものだ。
ただ、カワウソの習性や生態との関係はどうだろう?
水族館や動物園のカワウソは成獣でも、よく小石などで遊ぶが、
寝るときにはケロッと忘れてほっぽり出してしまう。
野生の場合にも似たような事があったのかもしれない。
○ちなみにラッコは好色と見られていたらしく(艶笑譚に出てくる)、
 ラッコの毛を撫でるとその方へなびいたままになっているので、
 誰にでもなびく浮気な女を「あいつはラッコだ」といったとそうだ。
■参考文献

更科源蔵
アイヌ文学の生活誌
[ honto / amazon / 国会図書館サーチ ]

高校時代に読んだ本。
スズメの神謡が好きでノートに書き写していた覚えがある。

知里幸恵 編訳
アイヌ神謡集
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知里真志保 編訳
アイヌ民譚集
[ amazon / 国会図書館サーチ ]