アマエビ

※カテゴリ:覚書・ネタはフィクションです。

私は一人暮らしを始めて、自炊を始めて1年にも満たない。
だから、二人分の晩御飯を作るのは面倒だ。

アマエビの殻を剥くというのは中々の難事だった。普通の、いわゆるエビフライの海老よりは小さな体、見た目は華奢な感じさえするアマエビ。しかし、パックから出してボウルにあけると直ぐに気がついた。トゲが手に刺さって痛い。とにかくアマエビは体中のアチコチがトゲだらけだ。首根っこを掴んで頭を落とすとイテってなる。頭から味噌を取り分けてイテ。足の側から殻をむきむきする時はまだいい。剥いた殻を分けて味噌汁の鍋に入れる時にイテっとなる。
殻剥きも、一人分だけした時はなんとか許容範囲だったらしい。しかし、二人分となると手間は2倍になるが、気持ち的には苦痛は3倍位以上だ。もはや苦行といってもいい。手を止めるわけではないが、つい要らないことまで考えてしまう。一体何のためにこんなことをしているのだろう?

ふとしたきっかけ、そんなものがあったのかどうかさえ、今ではよく分からない。ちょっとした出来事の積み重ね、ではあったと思う。けれど、一本道ではなく、決して単調なルートでもなく、むしろ偶然が沢山折り重なって通り抜けた長いトンネルのようなもの。だから、奇跡というのとは違うような気がする。
時々、晩御飯を作ってあげる。そんなことを繰り返すだけの彼とのやりとり、のようなものはしかし、それより進展することもなく、定期的なイベントようなものになっている。

私は一人暮らしを始めて、自炊を始めてもうすぐ1年になる。
なので、二人分の晩御飯を作るのは少し楽しい。


久しぶりにフィクションを書こうと思いました。かれこれ5年分くらい溜まっているので、少しずつ形にしようと思います。